HOME事務所通信事務所通信生命侵害による損害賠償請求権の相続について

事務所通信

生命侵害による損害賠償請求権の相続について

2018/07/20

(問)父が交通事故で死亡しました。遺族として加害者にどのような請求ができますか?

また、即死した場合と重傷を負った後入院し、しばらくして死亡した場合とで異なりますか?

(答)死亡による損害賠償請求ができます。すなわち、財産的損害賠償請求権と非財産的

損害賠償請求権の両方について相続して、加害者に請求できます。即死した場合と重傷を

負った後入院し、しばらくして死亡した場合とで差はありません。

財産的損害賠償請求権とは、医療費、葬儀費用、死亡した人の逸失利益です。

逸失利益とは、相応の年齢まで得られたはずの収入です。ただし、本人の生活費と一括

して支払いを受けることが出来ることによる利息相当分の利益分を差し引きます。

非財産的損害賠償請求権とは、慰謝料のことです。

(問題点)

死亡による財産的損害については、それが発生する時点で、本人が死亡していますので、

そもそも死亡者本人は、財産的損害賠償請求権を取得することができないのではないか

という問題があります。

そして、本人が取得できませんので、その相続もありえないのではないかという問題です。

しかし、重傷を負った後入院し、しばらくして死亡した場合は、重傷を負ったことによる

損害賠償請求権が発生して、それが相続されるのに対して、即死の場合は、一切相続されない

という不均衡が生じてしまいます。

そこで、即死の場合も、死亡者本人は、財産的損害賠償請求権を取得することができ、

それが相続人に相続されるというのが判例です。非財産的損害賠償請求権=慰謝料請求権に

ついては、死亡者本人に慰謝料請求権が発生するかという問題と、慰謝料請求権は一身専属的な

権利であるので、そもそも相続の対象となるのかという問題があります。

慰謝料というのは、精神的な苦痛に対する賠償ですので、本来主観的なもので、その人限りのもの

であるからです。昔の判例に、生前「残念」と叫んで死亡した場合は、慰謝料請求意思ありとして

相続されるというのがありましたが、即死の場合、意思表示ができず、慰謝料が発生しないと

いうのでは、不均衡であることから、一律、死亡者本人に慰謝料請求権が発生し、それが当然相続

されるとするのが現判例です。尚、生命侵害の場合、一定の遺族(父母、配偶者、子)に遺族固有

の慰謝料請求権が認められています(民法711条)。

したがって、死亡者の遺族は、死亡者本人の慰謝料を相続したものと遺族固有の慰謝料の両方を

請求することが出来ます。ただし、総額としては、両方請求する場合と一方だけ請求する場合と

大差ない金額が定められます。

 

司法書士行政書士 福満賢一

カテゴリー

最近の投稿

カレンダー

10月 2024
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
28293031  

アーカイブ